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御礼と追憶

  • 執筆者の写真: keiichiroyamazaki
    keiichiroyamazaki
  • 11月21日
  • 読了時間: 2分

更新日:11月22日

大変遅くなってしまいましたが、今年もzakuraでの個展にお越しいただきありがとうございました。誰も来なかろうが知ったことではない、という偏屈な態度でお送りしているささやかな個展ですが、知っているのと全然違う子供のような顔をされて作品をご覧になる皆様の姿を横から見ているのはとても幸せなものです。ビルの建て替え計画も明らかになって、あと数年はあの場所でお送りできそうですので、また来秋に皆様をお迎えできたらと思っています。


個展を終えて諸々事後対応があり、仕事に忙殺され、ショックな出来事があったりとしばらく落ち着きませんでしたが、ようやくひと息ついて、若干寂しさと虚無の混じったふわふわとした解放感を今は楽しんでいます。会いたいミュージシャンもいるからジャムセッションにでも行こうかと思っていたところ、唐突ながらここ5年ほどの間どうしても思い出すことができず悶々としていた遠い記憶を取り戻しましたので、ここにメモしておきます。



東京倶楽部目黒店は「Jay-J's Cafe」

東京倶楽部本郷店は「Room#1102」



私がまだ音楽をやっていた2000年代の半ばごろ東京倶楽部は水道橋の1店舗のみで、現在と違い毎夜バーとしてオープンして質の高いライブとお酒が提供されていた。長いブランクの後「ひさしぶりに楽器を吹いてみようか」とお店事情を調べてみたら同店は3店舗経営の、ライブよりもセッション企画中心のレンタルスペース風な雰囲気になっていて、昔外から見て感じていた市井のジャズの世界の行き詰まり、音楽の質と集客、ライブとセッションといった問題の因果を思わざるを得なかった。新たにできた本郷と目黒の東京倶楽部は昔たしかに他の名前のジャズクラブであったはずが、どうしてもその名前を思い出すことができなかった。


webが人々にとって欠かすことのできない情報源となって久しく、今ではその収集が瞬時かつ大量に行われるようになり、あたかもそれが万能な集合知かのようにあてにされているようなところがあるが、たかだか20年前の店舗の名前を住所まで明らかでも簡単には突き止めることができない、そんな頼りないところもあるのは興味深いこと。当時目黒のお店には行ったことがなかったが、本郷でふかふかした絨毯の柔らかさを足裏に感じながら聴いた無骨なテナーサックスと鋭利なピアノのデュオによるInner Urgeは、世界中で私の内側にしか残されていない、貴い記憶だ。

 
 
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