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  • 執筆者の写真keiichiroyamazaki

夜明け前

先月の終わりくらいから急に忙しくなってきた。公私とも時間に追われるようで、どうも毎日落ち着かない。今日は朝帰ってきて休みだから、束の間ゆっくり過ごそうと思う。


月に幾度かの深夜仕事が始まってもう5年くらいになるだろうか。終了後の時間は、はじめのころは始発まで飲んだり、撮り歩いたり、あれこれ試した末ネットカフェで仮眠を取るようになったが、どうも深夜早朝のセンター街周辺というのは歩くだけで精神が擦り減るような思いがするもので、疲れた身体を引きずって訪れる気がしなくなってきた。


最近のお気に入りは、ずばりバーミヤンである。少し前はコロナの関係で営業時間が短縮されていたのだけど、深夜帯営業が再開されるとまるでオアシスのようで、ほんとうに助かっている。広くて、明るくて、空いていて、いつ訪ねても店員さんがはきはきと朗らかで、それが土地柄と時間帯から意外なほどで、癒される。それに何より、ここのドリンクバーにはプーアール茶があるのだ。寒い冬の夜、長時間の労働でへとへとになった身体に熱いプーアールはじんわり染み込んで、力が抜けリラックスできる。


渋谷と原宿の間の、深夜はエアポケットのようになる静かなエリア。ここなら始発の駅に向かうにも汚らしいところを通る必要がなく、精神衛生上とてもよい。そんな感覚を持つ人たちが他にもいるのか、皆思い思いに長い一日の終わり、夜明け前の時間を穏やかに過ごしている。互いに関わることはなくても、この時間の意味合いのようなものが似通っているのだろう、どこか示し合わせたような雰囲気がある。


憩いという言葉を形にしたようなその空気が、なんだかとても好きだ。

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