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  • 執筆者の写真keiichiroyamazaki

満月の翌日に

人はそれぞれに「枠組み」を持つ。それは生き様とも、考えとも、価値観とも、言葉とも、感性とも、様々に言い換えることができる。それは己を縛る鎖であり、一方で犯すべからざる領分であり、ひいては己そのものである。


それぞれが異なる「枠組み」を持つのだから軋轢が生じるのは必然で、いかに理不尽で受け入れ難い残酷なジレンマがあろうと、それが人間と言い放つほかないことだってあるだろう。悲しくとも、苦しくとも、納得いかなくとも、生きるほかない。業とも言えよう。


しかし「枠組み」が省みられないとしたらどうだろうか。虚像、虚栄、虚ろなるものを丸呑みにさせられていることを知らず、己に己の「枠組み」があるということを想像すらしないとしたら、それを生きた人間と言えるだろうか。そんな世界を、もしかしてひとは幸せだと思っていないだろうか。進んで虚ろを貪ってはいないだろうか。私がずっと抱き続けてきた疑問と違和感のひとつはまさにこの点にある。


自分が見つめているものを違う方向から見てくれているひとがいることが嬉しいし、情熱をもってそれを形にしようとする方々の生き生きとした姿はとてもとても尊いものでした。豊かな時間をありがとうございました。


2023.9.30

くちなし第4回公演『柵で囲う檻の柵』

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