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  • 執筆者の写真keiichiroyamazaki

相棒たち

高校生の頃は所謂ハイテクスニーカーが隆盛で、白黒のエアマエストロ'96や、同じくNIKEのクロノスという青いスエードのシューズを履いていた。楽器の練習に明け暮れた高校時代と赤貧の大学時代の足元を支え続けて、最後にはほんとうにボロボロになって、名残惜しくお別れをした。


大学を出た頃、しっくりきたのはadidasの定番、グリーンのカントリーで、できもしないのに半ばヤケクソでジャムセッションに行ったり、バンドをやったりするようになった。一年に何百もの人たちと演奏をして、未知の音楽を身体で学んで、夢中で、必死だった。毎日が濃密で、月日が過ぎゆくのを遅く感じた。スニーカーでステージに立つことは特別な場合を除いてなかったと思うが、いちばんお気に入りだった。


30手前頃、カントリーもボロボロになって、ある日セール品のNIKE、サッカーシューズを買ってきた。型番は忘れてしまった。スパイクだったこともありカントリーからの移行は違和感があったがやがて慣れた。ライブで全国いろんなところに履いて行ったから頑丈な造りが頼もしかった。ランニングを始めたりもして、こちらは普段使い用だったから駆け回ったりはしなかったが、ある日、バッティングセンターで会心の当たりと引き換えにアウトソールがずるりと取れてしまった。壮絶な最期だった。


音楽をやめて写真をやるようになり、ものすごくたくさん歩くライフスタイルになったから、スニーカーの寿命はとても短くなってしまった。オールスタータイプのものを何足も履き潰して、中古品で数を揃えてローテーションして傷みを遅くしたりもしている。グリーンのカントリーはまた履きたいと思っているのだけど、以前とは着ているものが違って意外とバランスが取りづらかったり、あとどうもフォルムが違うような感じがして躊躇っている。個体差があるのかもしれない。もうすこし丸っこい感じがしたのだけど。


先日、実は一度も履いたことのなかったスーパースターを買った。カラーはトリコロール。履き心地も上々で、今持っているボトムス類とも馴染んでいる。靴はある程度の期間使い続けるものだから、その時期の自分の記憶とよく結びつくように思う。スタンスミスは表参道から6時間ぶっ通しで歩いて帰ったらすぐに壊れてしまったし、この一足はひさしぶりにじっくり履いていきたいと思っている。


今また変化の渦中にいて、どんな道程をゆくことになるのか見当もつかないけれど、一歩一歩、踏みしめて歩きたい。

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