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  • 執筆者の写真keiichiroyamazaki

2022

2月の個展では、作品とサルトルに合わせてフランスワイン、2016年のすばらしい農協メドックと若い南仏のカベルネ&シラーを選んだ。12月は作品とホルへ・ルイス・ボルヘスに合わせてアルゼンチンのマルベックを。アルゼンチンのワインには馴染みが全然なく、はじめはアメリカンオーク由来の強烈なバニラの洗礼を受けてきつかったけれど、珍しく樽を用いないまろやかなビニャルバと、カテナの単一畑、2017のアンヘリカ。後者はバニラやコーヒーと果実味との調和がとてもよく官能的で、目的にぴたりと一致して満足だった。それだけでは足りないから補助的にボルドーも用意していて、熟成したものがよかったから2008年サンテステフのシャトー・クローゼを選んだが、まだしっかり若々しく、昔ながらの骨太なボルドーの生命力に驚いた。


何もかもが高速化した現代では、ひとは答えを即座に求めようとする。意味は観念のある部分を切り抜いた一面であるにすぎないのに、切り落とされたものとの関わりから対象を見て、自己の内面にその枠組みを再構築すべく問い直す作業を、ひとはしなくなっていると感じている。私がワインを飲み始めたとき、世界はすでに早飲みの時代になっていたけれど、質実剛健なサンテステフは、手に入れたら短くとも10年はセラーに入れて、飲み頃は自分で判断する、そういう時代の奥深さ、おもしろさを教えてくれる。


今年は、月並みだけど充実していた。二度の個展で作品も増えて、たくさんのひとと話をして、少しは音楽も楽しめた。

「作品の価値は自分が死んだ後、誰かがそれを見つけたときに感じる重みによって決まる」

そんな言葉の余韻が残る2022年。人生は短いけれど、粛々とやればよい。そう思っている。


本年もありがとうございました。

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