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  • 執筆者の写真keiichiroyamazaki

気ままな時間

思いがけず時間ができたので、お買い上げいただいた作品のお届けに、寄り道しながらゆっくりと伺うことに。


賑やかな年末の銀座で用事を済ませて、時間調整に楽器店に行くと試奏コーナーがあった。見慣れないデジタルサックスを近眼の目を凝らして見ていたら店員さんに声をかけられ、成り行きでトランペットの試奏を。最新の楽器を吹くのは初めてだった。


YTR8335S

マイナーチェンジはされたものの昔からある型番で、Bachタイプのヘビーなイメージがあったのだけれど、重心がベルよりもバルブ側にあるようでそれを感じないし、とてもバランスよく軽やかで吹きやすかった。


YTR8310Z

中学生のころ吹いていたなつかしい6320の流れを汲む、ポピュラー音楽の定番モデル。重心は8335よりもベル寄り。結論から言うとこれは使いこなせそうにない。ちょっと間違うとバリっと言ってしまって手前側に纏めるのに神経を使うし、音楽の流れによってはたぶん簡単にオーバーブロウしてしまうだろう。ほんとうはこういうのをちゃんと吹けないといけないのだと思う。


自分のYTR333怪

現代の楽器を吹いたあと自分のに戻ると、改造されてはいるもののガッチリできているとやはり感じる。重心は前め。摩耗だなんだといろいろ緩くなっているし、共振を抑えたくて銅のテープや10セントコインを仕込んでいるけれど、現代機を吹いてみるとその目的がより明確になってイメージがしっかりするように思う。音は、決して負けていない。


店員さんは昔の楽器にも詳しく、333にも興味津々で、あれこれ話しながら思いがけず長居をしてしまった。いろいろあったし、もう満足には吹けないけれど、こういうのはやはり楽しい。


その後、通りすがりのギャラリーで鎌倉の風景画を見る。丁寧な筆致と、画家さんの柔らかな眼差しが印象深い。北鎌倉はほんとうに閑静ないいところだが、近頃はドラマか何かの影響で大変な騒ぎだそうだ。


さて、経堂に向かう。行き交うたくさんの人々すべてに各々の時間が流れていて、それがかすかに触れ合う音に、耳を傾ける。


夜は少し音楽をやってこよう。そんな気分だ。


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