top of page
  • 執筆者の写真keiichiroyamazaki

バロックの組曲が楽しい。アルマンド、クーラント、サラバンド。もうひとつふたつ挟んでジーグで締める。調性を揃えて、それぞれのリズム、強弱と躍動感のコントラストで繊細に奏でられる歌は古式ながら洗練されて、美しい。

暖かくなって、街がそわそわと活気づいてきているように感じる。人混みは好きではないけれど、自粛自粛でがらんとしていた頃を思えばそれも喜ばしい。左に右に顔、顔、顔。みんな自分とは違うにんげんで、その見る色、聞く音、手に伝わる温もりの感性を知ることはできないけれど、各々が同じく五つの感覚とそれらを統べる脳を持ち、時に喜び、時に怒り、痛みに苛まれて生きる。枠組みは共通していて、その下で千々の個性が花開く。


多様性の時代。聞こえはよいけれど、「どうせみんな違うのだからわからない。考えるだけ無駄」という浅はかさが満ちているように感じられてならない。表出した個性よりもその土壌、共通する枠組みに目を向けるほうが、結果として個を尊重することになるのではないか。勝手にどこにだって現れてくるのだから、個性は要らない。意識する必要がないのだ。

bottom of page