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  • 執筆者の写真keiichiroyamazaki

向き合う時間

ボルドーのワインが好きで、家で気楽な定番としていただける安価なものがいつか見つかればと時々買って試してみるのだけど、一本を何日もかけて飲んでいるとどうも情が移るようで、いつまでも決まらない。


この前買ってきた2015年、メルロ単一のコート・ド・カスティヨンは非常に堅牢で、早かったのかと頑張ってたくさん回してみたら埃っぽいほどのタンニンとスパイスの香りの向こうにかすかにベリーの風味が現れて愛おしい気持ちになった。

抜栓から3日、4日。とても強情で、開きそうで開かないもどかしさがあったけれど、5日目にいただいたらいつの間にか、ずいぶん親しくなれたような気がした。決して華やかではないけれどどこか高貴で、複雑で、奥床しい。ただ開けて美味しくいただくよりもずっと、一週間かけて幸せな時間を過ごしているように思う。こんなに日持ちする安価なワインは初めてで、驚いた。


短絡的に当たりだ外れだなど喚かず、いいところはないか、よくならないか、一緒に過ごしてみることが豊かで、示唆を与えてくれて、楽しい。楽しくて、やはり決まらない。

これは一種の浮気性なのかもしれないが、それが即ち不誠実ということもない。物事は常に多面的であるはずだ。



●メモ

Ch. Tertre de Belves 2015

melrot 100%

Castillon Cotes de Bordeaux

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