keiichiroyamazaki
- 1月20日
額縁の中で
微睡むようでありながら、精神のどこかがぴんと張り詰めて、温かくも冷ややかな夜。洞窟のような暗闇の底で、大理石のテーブルの優美なひび割れを眺めながら、か細いランプの灯をグラスの縁が気まぐれに透過し、または反射するのを愉しんでいる。上下の顎がオリーブの実を潰すのさえ気を遣うほど...
keiichiroyamazaki
- 1月11日
憧憬
小学校に入学して最初に隣の席になった女の子とは6年生までずっと同じクラスで、とても生真面目で内気な子だったからそのわりに特に親しくはならなかったのだけど、合唱部に入っていて、日頃無口であまり声を聞くことのないほどだったのに、歌うときはまるで別人のように生き生きしていた。...
keiichiroyamazaki
- 1月3日
迎春
神田のlydianに似たがらんとして整然と椅子の並んだ客席はほどよく埋まって賑やかで、誰も知っているひとのいないセッション特有の品定めするような視線が向けられるのを煩わしく感じながら、若くて神経質そうな、しかし自信に満ちた態度のピアニストにテンポを指示したが、彼はそれを半ば...
keiichiroyamazaki
- 2023年12月28日
2023
変化を感じた年でした。していることはこれまでと変わらなくても、その心模様と言いますか、景色が変わって、人生の重心のようなものにまた少し触れることができたような気がします。反動も少しあって、心身の釣り合いを取るのが難しかったこともありましたが、それも前に進んでいることの現れと...
keiichiroyamazaki
- 2023年12月18日
冬月
私が使うのは日本語だから、その意味体系の枠組みは否応なく私の意識のありように影響を与える。それとは別にもっと小さな枠組みもあって、私は私の日本語の捉えかたというものを育みながら生きてきて、それもやはり、私の意識を形成している。...
keiichiroyamazaki
- 2023年12月6日
凝縮してゆく
購入いただいた作品は、先方に不都合がなければできるだけ自分で届けるようにしている。配送でも構わないのだが、額のネジが緩んだり中身がずれたり、そんな些細な異常が生じないとも限らず、一緒に直接確認すればその場で直すのは簡単だし、何より感謝を直接お伝えすることができるからだ。...
keiichiroyamazaki
- 2023年11月28日
テニス
ライブや個展を終えてようやく落ち着いた先週末に人生初のテニス観戦をした。横浜慶応チャレンジャー男子シングルス、綿貫陽介選手とM.モー選手による準決勝だったが、すばらしい体験だった。 スピード感や力強さはもちろん、両選手が各々磨き上げた身ごなしの、武道のような、あるいはバレエ...
keiichiroyamazaki
- 2023年11月22日
御礼申し上げます
無事に会期を終え雑事に追われています。ご来廊くださった皆様ありがとうございました。朝昼夜、刻々と表情を変えるあの部屋でおひとりおひとりと過ごした時間、交わした言葉のひとつひとつを胸に、これからも粛々と手を動かしていこうと思います。...